2022.10.13
  • コラム

記憶の百年記念塔

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札幌市厚別区の野幌森林公園内の「百年記念塔」の解体が迫ってきました。建築士として思うこともありますが、道民として市民として厚別区民として、こんなに悲しい事はありません。

反対する市民団体は、解体工事差し止めを求め提訴に踏み切った様です。

山本跨線橋から百年記念塔を望む

僕は小学校から生まれた南郷18丁目から厚別西に移り住みました。中学校への通学路は山本跨線橋を通りますが、この線路沿いの百年記念塔を見るのが好きでした。小学生の時には遠足でも登りましたし、厚別区からはどこからでも見られますし、子供の頃からのランドマークです。

厚別西地区は昔はそれは「カウボーイ」を中心に活気がありました。土日しか開いてないカウボーイは、肉のまちや魚のまちなど小屋が点在して人がごった返して、景気の良い掛け声が溢れていました。

ふるさとを感じる風景

山本跨線橋から4棟の雇用促進住宅を望む

カウボーイには、子どもだと490円くらいで食べ放題のバイキングがありまして移り住む前によく家族で食べに行っていました。子どもの僕は値段や味よりも、とにかく人が多くて賑やかで、あの階段で1時間くらい並ぶのだって楽しい思い出です。

その記憶を呼び起こすのが4棟の「雇用促進住宅」でした。橋を上がりマンションを見ると「さあもう着くよ」とワクワクしたものです。移り住んで35年経った今でも、この4棟を見ると「ああ、帰ってきたな」って思います。

そのカウボーイも取り壊され箱物に変わり、風景や賑わいは一変しました。まるで違う街の様です。跨線橋を跨いだ記憶の先に、人混みや賑わいはありません。

百年記念塔は記憶、モニュメント

曲がり角のコンビニを見たとき、交差点の焼き鳥屋の煙を嗅いだとき、色々な記憶がこの場所をふるさとにしてくれますが、「百年記念塔」は厚別区のどこからでも見えますので、記憶の代表、ふるさとのキャプテンと言っても良いと思います。

多分なくなっても普段は気がつかないでしょうが、重ねた年齢の分、その違和感、記憶の損失は計り知れないのでないのかな?って思います。

コンセプトは耐久性と壊れない感

1.塔は老朽化などしていません。専門家による調査団が証明しています。

2.塔の建設資金の半分は、道民の寄付金によってまかなわれました。

3.塔は全国規模で行われた設計コンペ299案から選ばれた貴重な作品です。

4.塔は建設当時の予算が枯渇し、未完成のオブジェです。

5.塔は、子どもたちが通う地元の学校の校歌や校章にもなっています。

https://www.100nen.jp/

老朽化や維持費を解体の理由に道はあげている様ですが、外装材のコールテン鋼は錆びてから本領を発揮する、まさにこれからの材料です。維持管理の見積が違うのではないか?というのが一建築士としての思うところですが、やはり、その道民・市民・区民の記憶の保全をどうにか見積に計上して頂きたいと思います。

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