2022.05.17
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宮脇檀『男と女の家』

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住宅作家の宮脇檀さんが他界したのは平成10年の10月21日、この本が出版されたのはその9日後の30日です。宮脇檀さんは住宅作品を多く手掛けていますが、本も数多く出版されていてその多くが住宅(家)に関することです。著作を見ると「住宅」と書かれた本は同業者向けに、「家」と書かれた本は住まい手向けに書かれているのかな?と思います。

「男と女の家」の7年前に「それでも建てたい家」を出版されていますが、内容は重複している部分も多くて変わったのは文体かな?と思います。どちらもスケッチなどの挿入はなくて文章だけです。

前作に比べて「男と女の家」の文体は砕けていて、より住まい手に寄り添った本になっています。7年という期間でより考え方がシンプルになって、より利他的な責任感を感じます。執筆時の気持ちや体調を思い浮かべると、どうしても姿勢が伸びますが、ベッドで晩酌のお供がちょうどいいかも知れません。

家とは?家族とは?

この本は宮脇檀さんにとって終活だったのかな?思いながら読んでいますと、なかなか(恥ずかしくて)設計者がお施主さんに聞けない内容が書かれています。誰もがココが一番大切なのだと分かっていますが、踏み込めません。

特に「それでも建てたい家」には書かれていなくて、「男と女の家」の最後の章(第六章 家における性)の内容はこの時の宮脇檀さんだからまとめる事が出来たんじゃないかな?って思います。

家族が住む家は、社会から離れた唯一のプライベートな場所です。「家とは何ぞや?」という本はたくさんあると思いますが、この本の内容は研究者や歴史家からは出せない建築家だから伝えれる事なのかな?って思います。もちろん、宮脇檀さんという人柄が大きいのでしょうが笑

設計行為とは?

建売ではない家をつくる準備の設計というのは、家族をパートナーを、そして自分を見つめ直す(つくり直す)大切な期間だと思っています。お施主さんの要望の行間を汲み上げるには信頼関係が重要ですし、そのにじみ出る行間にはお互い時間が必要です。

その大切だけど言葉に出来ない行間を、この本はユーモアを交えながら伝えてくれる、意外と他にはない本になっていますのでオススメですよ!

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